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死毒に彩なす

第6章 歪を彩る



もう何度目かにもなるこの行為も初期の頃は手つきが大分ぎこちなく、大雑把な力任せになりがちだった。
その都度、成恢から冷ややかな皮肉を浴びせられてきたシキだが――まあ、それくらいで挫けるような"まとも"な精神性を持っていれば、成恢だって余計な苦労を負わずに済んでいたのだ。

実際のところ、挫けるどころか「じゃあ、練習あるのみですね!」「これからも、こうやって成恢さまと一緒に覚えていくから、ちゃんと見ててくださいね」と大層明るく問題に――元凶そのものがシキ自身なのだが――向き合い、成恢との時間をまるで正当なもののように断続的に確保してきた始末である。
……どうしてこうなった。

「ふふっ」

奇しくもシキの宣告通り、成恢の傍らで時を重ねるうちにすっかり行為に手慣れたシキは、成恢を無駄に痛めつけることもなく丁重に扱えるようになっていた。
……あまつさえ、楽しそうに。

「……こんなことが本当に好いのか?お前は」
「はいっ」
「…………はぁ。こうも即答されては、ますます理解できぬな……」
「えー?ホントに楽しいのに……。それに成恢さまとこうやっていっぱい触れ合えるのも、この時間の特権でしょう?」

健やかな生気を失った色に染まる成恢の手を、役得とばかりにシキが両手で包み込む。


不可抗力とはいえ、事実でもあるから成恢は黙り込んだ。

他でもない己が与えてやった"特権"であるから、ぐうの音が出ないとも言えた。


それでもやはり、服毒の影響をふんだんに孕んだ己の手が、こうも"好いもの"のように扱われることへの形容し難い心地が拭えない。

世に並居る武将の手とは、長年の錬磨と合戦によって胼胝や傷跡が刻まれているものなのだろう。

自ら武器を振るう将ではない成恢の手は、武人特有の皮膚の硬さや武骨な厚みなど全くなく、むしろ服毒によって薄くなった肉質が目立つ。
骨ばった形が、生え揃う指の先まで浮かび上がった――ともすれば、繊細な手であった。

本日の実験で強めの毒草に触れた影響か、今日の指先はいつも以上に冷え切り、湯浴みを終えたにも拘らず皮膚の表面には僅かな粉末状の結晶が薄らと吹き出してきている。
そうでなくとも指の関節や掌の要所には、幾度となく触れてきた毒物の色素が沈着し、染みのように澱んでいるのだ。
不気味でこそあれど、可愛くも綺麗でもないのは間違いない。

だのに……。
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