第6章 歪を彩る
目を見開き、わななく唇に両手を当てて、こちらを凝視する娘。
よく見れば、肩が微弱に震えている。
毒に冒され、どす黒い血管が浮かぶ醜い姿になった己に対して、かような反応を示す人間はさして珍しくもない。
それが年端もゆかぬような少女であれば尚のこと。
悲鳴を上げられては厄介だ。
そうなる前に毒で神経を一時的に麻痺させるか、と懐に忍ばせた毒薬の一つを密かに摘まんだ矢先――目の前の少女は、声を震わせながら吐き出すように言い放った。
『か、可愛い……!』
『…………は?』
――――訳のわからないことを紡いだ甲高い声の残響が、脳裏に満ちる。
次第に、在りし日の光景が水面に溶けるようにして遠ざかっていく。
やがて、成恢は薄く目を開いた。
行灯の仄かな燈火が齎す影が、敷物の上にゆらゆらと揺れている。
薄ぼけた視界が徐々にハッキリと色付いていく中、瞼を重たげに押し上げ、深く息を吐き出しながら身体を起こした。
肘置き台に預けていた腕を持ち上げ、黒々とした血管が幾重も浮かぶ顔に片手を当てる。
どうやらほんの僅かの間だが、うたた寝をしていたらしい。
「ふ……。よりにもよって……あの日を夢に見るとはな」
苦笑とも自嘲ともつかぬ吐息が、掠れた呟きと共にぽつりと落とされた。
――――『か、可愛い……!』
何度思い出しても、呆れを通り越して狂気すら感じる。
こともあろうに、すでに変わり果てていた成恢を初めて見た第一声が「可愛い」などと……ああ、馬鹿馬鹿しい。酔狂にも程がある。
どう考えても気が触れているとしか思えぬ女――シキとの出会いは、図らずとも互いに衝撃を与えたものだ。