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死毒に彩なす

第6章 歪を彩る


他国に及ばぬ圧倒的な兵力差を埋める無二の武力として、成恢の毒兵器が今日まで確立されているのは何故か。

わずかな劇薬で数千、数万の敵を無力化する毒こそが、この弱小国たる韓が生き残るための最も効率的で、強力な"力"だからだ。

しかし、代わりに金と物資を大量に投入する必要があるため、毒兵器に対する文官たちの問題視は、必ずしも間違っているとは言い切れなかった。
国庫の支出を管理する側からすれば、費用を顧みることは本来の職務でもあるのだ。

いくら成果を出そうとも、成恢の戦術構造の裏側にある事実は、常に韓国が抱える問題と隣り合わせていることもまた事実。

それでも己の毒兵器は、もはや韓の軍事体制になくてはならぬものとして組み込まれている。

成恢が「下らぬ」と切り捨てたのは、成恢の功績による恩恵だけを享受し、その他を忌む文官たちの態度にこそあった。
毒兵器が齎す国の安寧の裏側で、毒を扱う者を蔑むことに何の合理性も見出せないからだ。
彼らがいくら成恢を忌み嫌おうとも、他国に対抗する術として成恢の毒に依存せざるを得ないのもまた、この国の偽らざる姿であろうに。

「浅ましいことだな」

己の毒がいかに国を支え、同時に一部から嫌悪されているかを再確認したところで木簡を閉じた。
卓の端へと雑に押しやり、短く鼻を鳴らす。

今更、誰に何を言われたところで何の感慨も湧かぬ。
正当な評価と報酬は、すでに国から得ているのだ。
一部の文官どもの陰湿な遠吠えに価値があるはずもない。



室内は再び、外から聞こえてくる虫の声以外の音を無くした。
卓の上にはまだいくつか書物が残されていたが、今宵はもう手に取る気にはなれなかった。


……どうせ、もう少ししたら来るだろう。


吹き抜けてくる風が香炉の煙を疎らに散らし、不自然な青みを色濃く帯びた肌を撫でゆく。

束の間の穏やかな休息に身を委ね、成恢は静かに瞼を下ろした。
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