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死毒に彩なす

第6章 歪を彩る


毒物の製造や、厳重な保管のために投じられる金は莫大だ。
まあ、他ならぬ『毒』によって此度の戦でも自軍の兵の消耗を可能な限り抑え、果ては勝利を収めたのだが。

……とはいえ、代償として支払われた試薬の開発と調達、戦場への輸送手段の費用なども加味すれば、全体としての軍費が安くないことは当然であった。


――――しかし、成恢という毒使いを第一将の座に据えている以上、国は彼の毒兵器を公認し、後押ししている。

先日の戦が明け、凱旋に伴って国から賜った報酬も、切迫した現在の情勢からは考えられぬほど正当かつ破格なものであった。


そのことについて、木簡には国庫への負担を重く見ながらも特例として認める旨が書き連ねられている。

表向きは"特例措置"などと体裁を整えているものの、その実、『莫大な費用と毒を用いてなお、これほどの物資と人員を食い潰すのか』という遠回しな皮肉として要約できる内容だった。

国は公に成恢の毒兵器を認めてこそいるが、万人が"そう"である訳ではないことを成恢もよく知っている。
毒によって醜悪な容姿に変貌した成恢自身や、扱う毒を不吉と蔑む人間が決して少なくないことも然り。

この木簡も、日頃より成恢を快く思わない一部の文官どもが公私を弁えずに送り付けてきたものだろう。

「フン……下らぬ。嫌悪しながらも縋るか」

せせら笑うようにして吐き捨てた声が、部屋の静寂を冷たく破る。

王宮の陰で成恢の功績を卑劣と見くびり、服毒による醜い姿を人外に見立て揶揄することしか出来ぬ連中が。
あまつさえ、このような形で責め立ててくる愚かさときたら……。

自分たちが何によって守られているのか知りながらも目を背けるか。
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