第7章 想い…
屋敷の前で立ち止まった斗和は、ふと隣の玄弥を見た。
「ねぇ、玄弥」
「はい?」
斗和はいつもの調子で、とんでもないことを口にした。
「酒の呼吸、覚える?」
「…………は?」
玄弥の目が点になる。
「酒の呼吸って……斗和さんの?」
「そう。私の後輩なんだし、一個くらい覚えてみてもいいんじゃない?」
「いやいやいや!!」
玄弥が慌てて両手を振る。
「俺、酒飲めねぇよ!?」
「大丈夫。最初はちょっとずつ」
「そういう問題じゃない!!」
隣で実弥が眉間を押さえた。
「斗和……お前、玄弥に何教える気だァ?」
「何って、酒の呼吸」
「聞こえてんだよォ!!」
玄弥は兄と斗和を交互に見る。
「……でも」
その表情が少しだけ変わった。
「俺、もっと強くなりたい」
斗和が目を瞬かせる。
「なら、やってみる?」
「……はい!」
即答だった。
しかし実弥が玄弥の肩を掴む。
「待てェ」
「兄ちゃん?」
「斗和の呼吸は、普通の奴が簡単に真似できるもんじゃねェ」
「実弥……」
斗和が苦笑する。
「心配してる?」
「してねェ」
即答。
だが、玄弥の肩を掴む手には力が入っている。
「……ただなァ」
実弥は玄弥を睨む。
「死ぬ気でやれ。中途半端な覚悟なら、最初からやめとけ」
玄弥は一瞬黙り――力強く頷いた。
「分かった」
斗和は嬉しそうに笑った。
「じゃあ決まりね」
「はい!」
「明日から特訓開始!」
「おう!」
その横で実弥が深々とため息を吐く。
「……俺の弟が、とうとう酒飲みになるのかァ」
「失礼な!」
斗和の声が屋敷前に響いた。