第6章 昔話をしてみようか…
「来るぞォ!」
憎珀天が腕を振り上げる。
次の瞬間、巨大な木の竜が地面を突き破った。
「――ッ!」
斗和が身構えるより早く、実弥が前へ出る。
「風の呼吸・壱ノ型――塵旋風・削ぎ!」
轟音。
木の竜が真っ二つに斬り裂かれ、斗和の頭上を掠めて吹き飛んでいく。
「実弥……!」
「ボサッとしてんじゃねェ!」
実弥は止まらない。
飛び散った木片をさらに斬り落としながら、憎珀天との距離を一気に詰める。
「テメェの相手は俺だァ!」
憎珀天が怒号を上げ、無数の木の竜を実弥へ向ける。
「実弥!」
斗和が駆け出そうとした瞬間――
「来るなァ!」
実弥が振り返りざまに刀を振る。
迫っていた木の竜をまとめて薙ぎ払い、そのまま斗和の前に立った。
「お前は周りを見てろォ」
その背中に、一切の迷いはない。
「……分かった!」
斗和が頷いた、その時。
「お待たせしましたァ!」
甘露寺蜜璃が戦場へ駆け込んできた。
「蜜璃!」
「二人とも大丈夫ですか!?」
「問題ねェ!」
実弥が答えると同時に、憎珀天の攻撃を真正面から受け止める。
蜜璃がその横を駆け抜け、しなやかな刀で木の竜を絡め取った。
「今です!」
「おォ!」
実弥が踏み込む。
一閃。
憎珀天の腕が斬り飛ばされる。
しかし、すぐに再生する。
「……厄介ですね!」
蜜璃が息を呑む。
「だったら――」
斗和が周囲を見回す。
「本体を探さないと!」
蜜璃が頷く。
「そうです! この鬼は私たち三人で食い止めます!」
実弥が刀を握り直す。
「炭治郎たちに本体を探させよ!あたしが援護する!!実弥は大丈夫?」
斗和が叫ぶ。
実弥は答える代わりに、憎珀天へ向かって踏み込んだ。
「――俺を誰だと思ってやがるゥ!」
その一撃が大地を抉る。
斗和は思わず笑った。
「早く行けェ!」
斗和が炭治郎、禰豆子、玄弥と共に走り出す。
その背後では、実弥と蜜璃が並んで憎珀天の猛攻を受け止めていた。
――実弥がいることで、確かに戦場は変わっていた。