第6章 昔話をしてみようか…
炭治郎が鬼の首へ向かって駆け出した、その時だった。
「――待て」
地面を震わせるような声が響く。
斗和が振り返る。
先ほどまで別々に動いていた四体の鬼――積怒、可楽、空喜、哀絶。
その身体が、一箇所へ引き寄せられていく。
「……え?」
斗和の顔が強張った。
「まさか……」
四体の鬼が重なった瞬間。
凄まじい衝撃波が辺りを吹き飛ばした。
「うわっ!」
斗和が腕で顔を庇う。
煙が晴れていく。
そこに立っていたのは、先ほどまでの鬼とは全く違う姿だった。
巨大な木を背負い、雷を纏い、額には巨大な角。
「――憎珀天」
斗和の口から、名前が漏れる。
「……知ってんのかァ?」
実弥が刀を構えたまま斗和を見る。
「うん……原作に出てくる鬼」
「またその『原作』かァ」
「あれが……本当に……」
斗和の手が僅かに震える。
知っていた。
この先に待っている戦いも。
憎珀天がどれほど厄介な鬼なのかも。
「おい、斗和」
実弥の声が飛ぶ。
「しっかりしろォ」
「……大丈夫」
斗和は刀を握り直した。
憎珀天が二人を見下ろす。
「人間如きが……我らを前にして生き残れると思うな」
轟音と共に木の竜が地面を突き破る。
「来るぞォ!」
実弥が叫ぶ。
斗和も横へ跳んだ。
「酒の呼吸――!」
斬撃が木の竜を切り裂く。
しかし、すぐに新たな木が地面から伸びてくる。
「嘘でしょ……!」
「チッ……面倒くせェ鬼だァ!」
実弥が刀を振り抜く。
二人は背中合わせになった。
「斗和!」
「何?」
「コイツは俺が引き受ける!」
「でも――」
「玄弥もいる。お前は周りを見ろォ!」
斗和は一瞬だけ実弥を見る。
そして頷いた。
「分かった!」
――原作にはなかった。
実弥がここにいる。
斗和自身もいる。
なら、この先に待っている未来だって変えられる。
そう信じて、斗和は再び刀を構えた。