第6章 昔話をしてみようか…
実弥が話し終えるまで、斗和は一度も口を挟まなかった。
「…………」
しばらく考えたあと、斗和は静かに口を開く。
「私は……玄弥を止める必要はないと思う」
「……いいのかァ?」
「もちろん、鬼を喰うこと自体は危険だと思う。でも、それだけで玄弥の覚悟まで否定するのは違うんじゃないかな」
斗和は実弥を真っ直ぐ見る。
「玄弥は兄ちゃんに謝りたくて鬼殺隊に入った。でも、それだけじゃない。自分も誰かを守れるようになりたいって思ったから、呼吸が使えなくても諦めなかったんでしょ?」
「…………」
「だったら、実弥ができることは……玄弥が帰ってこられる場所を残しておくことじゃない?」
実弥の目が僅かに揺れた。
「……帰ってこられる場所、か」
「うん。危険なことをしたら怒っていい。でも、突き放しちゃ駄目」
斗和はそこで少しだけ笑った。
「……私も昔、似たようなことしたから」
「は?」
「私が鬼殺隊に入るって言った時、蛍に反対されたんだよ」
実弥が目を見開く。
「お前が……?」
「そう。『危ないからやめろ』って。何度も止められた」
斗和は懐かしそうに目を細める。
「あたしも若かったからさ。兄貴と大喧嘩して……そのまま里を出た。」
「家出みてェなもんか」
「うん。ほとんど家出…もう何年も会ってない…」
苦笑する斗和。
「だから、玄弥の気持ちが全部分かるとは言わない。でも……反対されても、それでも自分で選びたかった気持ちは分かるよ」
実弥は黙っている。
「だから私は、玄弥を止めるより見守る方を勧める」
斗和は実弥の手をそっと握った。
「ただし――死なせないこと。それだけは、兄ちゃんとして約束してあげて」
「…………あァ」
実弥は握られた手を見つめる。
「分かった。俺ァ、あいつを突き放さねェ」
そして小さく息を吐いた。
「……お前にも、そんな頃があったんだなァ」
「あたしだって、昔は結構やんちゃだったんだよ?」
「今もだろォ」
「失礼な!」
二人の間に、ようやく小さな笑いが戻った。