第6章 昔話をしてみようか…
「兄ちゃん……俺、ずっと謝りたかったんだ」
玄弥は俯いたまま話し始めた。
「昔、兄ちゃんに……人殺しって言ったこと。本当に悪かったと思ってる」
実弥の眉が僅かに動く。
「母ちゃんを殺した兄ちゃんが許せなくて……でも、今なら分かる。兄ちゃんは俺たちを守ろうとしてたんだって」
「…………」
「だから俺も鬼殺隊に入った。兄ちゃんに会って、ちゃんと謝りたかった」
玄弥は続けた。
「でも俺、呼吸が使えないんだ。何をやっても駄目で……それでも鬼を殺せるようになりたかった」
「だから悲鳴嶼さんのところで修行してんのかァ」
「うん。そこで、呼吸に似た方法を教えてもらってる」
玄弥は拳を握る。
「俺は鬼を喰うことで、一時的に鬼の力を得られる。鬼化することもある。でも、意識を保ったまま人として戦えるんだ」
実弥は黙って聞いていた。
腹の底では、まだ納得できねェ。
鬼を喰うなんざ、危険すぎる。
だが――
「……死ぬんじゃねェぞ」
「兄ちゃん……」
「俺に謝るために隊士になったんなら、勝手に死んで終わりにすんじゃねェ」
玄弥の目に涙が浮かぶ。
「ありがとう……兄ちゃん」
「礼なんざいらねェ」
実弥は顔を逸らした。
「……ったく。面倒くせェ弟だァ」
玄弥が帰ったあと。
実弥は一人、縁側に座っていた。
「…………」
どうにも胸の奥が引っかかる。
鬼を喰うこと。
鬼化すること。
それでも人として戦えるということ。
「……俺だけじゃ判断つかねェな」
ふと、斗和の顔が浮かぶ。
あいつなら――。
実弥は立ち上がった。
「……斗和に聞くかァ」
そして屋敷の中へ向かう。
「おーい、斗和ァ」
「ん? どうしたの?」
「……ちょっと相談がある」
斗和が目を丸くする。
「実弥が私に相談?」
「悪ィかよ」
「いや、珍しいなと思って」
「……玄弥のことだ」
その一言で、斗和の表情が変わった。
「……うん。聞かせて」
実弥は、玄弥から聞いたことを最初から話し始めた。