第4章 俺の守りたいもの…
翌日。
善逸がいなくなったことを知りながらも、斗和は店の中で普段通りに振る舞っていた。
「斗和、今日は蕨姫花魁のところへ酒を届けておくれ」
「はい」
(……原作でも、ここから善逸の失踪が大きな手掛かりになる)
斗和は盆を持ち、二階へ向かう。
廊下を歩いていると、部屋の前から女の声が聞こえた。
「お前、邪魔なのよ」
続いて、何かを打ちつけるような音。
斗和は足を止める。
(……この感じ)
襖の向こうから漂う、異様な気配。
鬼の匂い。
しかも――尋常ではない。
斗和はすぐに気づいた。
(やっぱり……蕨姫花魁が堕姫だ)
だが、今は斬れない。
ここで正体を明かせば、潜入そのものが崩れる。
斗和は何も聞かなかったように踵を返した。
その直後。
「……何をしているの?」
背後から声がした。
斗和が振り返る。
そこには、蕨姫花魁が立っていた。
「お酒をお届けに」
「そう」
堕姫は斗和をじっと見つめる。
「……あなた、本当に妙な女ね」
「よく言われます」
斗和は笑った。
堕姫も笑う。
だが、その目だけは笑っていなかった。
――互いに、互いを警戒している。
一方その頃。
炭治郎は街中を駆け回っていた。
「善逸……どこにいるんだ……!」
伊之助もまた、独自に店々を探っている。
そして宇髄は、三人の嫁たちから届いた情報を繋ぎ合わせていた。
原作と同じように――。
遊郭の闇は、少しずつその姿を現し始めていた。
そして斗和もまた、堕姫の正体を確信したことで決意する。
(善逸を見つける)
(そのうえで――こいつの正体を暴く)
まだ、抜刀する時ではない。
斗和は再び「新人女郎」の顔を作り、堕姫の前で静かに頭を下げた。