第1章 始まり
それから、何度か任務で斗和と顔を合わせるようになった。
会うたびに、俺の疑問は深くなっていった。
「……おい、斗和」
「んー?」
縁側で徳利を傾けている斗和を睨む。
「テメェ、本当に甲かァ?」
「そうだけど?」
「……」
納得できねェ。
普段の斗和は、とにかく酷ェ。
昼間から酒を飲む。
任務が終われば飯より先に酒。
時には廊下で寝ている。
戦闘中の姿を知らなけりゃ、ただのだらしねェ女だ。
だが――
任務になると、別人になる。
先日の鬼なんざ、俺が苦戦している間に一太刀で頸を落としやがった。
しかも、息一つ乱してねェ。
「……なんでテメェ、そんなに強ェんだァ?」
思わず口に出た。
斗和は徳利を止め、俺を見る。
「長く鬼殺隊やってるからじゃない?」
「それだけで説明つくかァ?」
「つくつく」
「つかねェよ!」
俺が怒鳴ると、斗和はケラケラ笑った。
「実弥は真面目だねぇ」
「テメェがふざけすぎなんだよォ!」
……やっぱり気に食わねェ。
こいつは何か隠している。
それだけは間違いない。
特に妙なのは、俺の動きを妙に把握していることだった。
俺が斬り込む位置。
鬼の動き。
次に俺がどう動くかまで、まるで最初から知っているように避ける。
「……斗和」
「なに?」
「テメェ、俺のこと知ってんのか?」
一瞬。
斗和の笑顔が止まった。
ほんの一瞬だった。
「……何のこと?」
「……いや」
俺はそれ以上追及しなかった。
だが確信した。
こいつは――何かを隠してやがる。
そして、いつか絶対にその正体を暴いてやる。
「……覚えとけよォ」
「何を?」
「テメェが何者なのか、俺が突き止めてやる」
斗和は目を丸くしたあと、楽しそうに笑った。
「……頑張ってね、実弥」
その笑顔が、妙に頭から離れなかった。