第3章 守りたいもの…
「失礼します」
斗和が産屋敷邸へ入る。
そこには、お館様――産屋敷耀哉が静かに座っていた。
「来てくれてありがとう、斗和」
「いえ……それで、何の御用でしょうか」
耀哉は少しだけ寂しそうに微笑む。
「杏寿郎がいなくなってしまった後に呼び出してしまって、すまないね……」
斗和の表情が曇る。
「……いえ」
「君が彼を救おうとしたことも知っているよ」
「……」
「だからこそ、君にお願いしたいことがあるんだ」
耀哉は穏やかに告げた。
「斗和。正式な柱になって欲しい」
「……お断りします」
即答だった。
「柱は向いてません」
「そうかい」
「責任も重いし、会議も多い。あたしには無理です」
「うん」
「だから――」
「でも、なってほしいんだ」
「……」
あまりにも穏やかな返答に、斗和が固まる。
「斗和は強い。長い間、鬼から人を守ってきた。君が柱になれば、救える命が増える」
「それは……」
「嫌なのかい?」
「……嫌です」
「そうか」
耀哉は優しく笑う。
まるで駄々をこねる幼い子供を諭すように。
「では、一緒に考えようか」
「え?」
「君が嫌だと言う理由を、一つずつ聞かせてくれる?」
斗和は理由を並べた。
責任が嫌。
目立つのが嫌。
会議が嫌。
面倒なのが嫌。
それを耀哉は全部、否定せず聞いた。
そして最後に――。
「それでも、君に柱になってほしい」
「……お館様」
「これは命令ではないよ」
少し間を置く。
「けれど、君ならできると私は信じている」
斗和は黙り込む。
優しい声なのに、逃げ道がない。
「……ずるいなぁ」
「そうかな?」
「そうですよ」
斗和は深いため息を吐いた。
「……分かりました。なります」
耀哉が微笑む。
「ありがとう、斗和」
「ただし!」
斗和が指を立てる。
「後悔しても知りませんからね」
「うん。しないよ」
こうして――長年、柱になることを拒み続けた斗和は、ついに正式な柱となった。
その名は――酔柱・鋼鐵塚斗和。