第3章 守りたいもの…
任務を終え、屋敷へ戻った実弥は、再び斗和を問い詰めた。
「なァ、斗和。あの屋敷……誰から与えられた?」
「誰だろうねぇ」
「テメェ……」
「昔から使ってるの。はい、この話おしまい」
「おしまいじゃねェ!」
「実弥、しつこい」
斗和は笑いながら酒瓶を傾ける。
「柱じゃねェ奴が、あんな屋敷を持ってること自体がおかしいんだよォ」
「柱になれば、もっと面倒じゃん」
「……チッ」
またしても、のらりくらりと躱された。
その直後だった。
「カァーッ! カァーッ!」
鎹鴉が飛び込んでくる。
『緊急任務! 単独で向かえ!』
「……単独?」
斗和は眉を寄せながらも、刀を手に取った。
「行ってくるね」
――そして、辿り着いた先。
そこには、血まみれになりながら戦う炎柱・煉獄杏寿郎と、上弦の参・猗窩座の姿があった。
「煉獄さん!」
斗和が駆け出す。
だが――遅かった。
猗窩座の拳が、煉獄の身体を貫く。
「……っ!」
斗和の足が止まる。
炭治郎が何かを叫び、猗窩座を朝日から逃がさないよう食い止めようとしていた。
しかし、猗窩座は逃げた。
残されたのは――倒れた煉獄だけ。
「……嘘でしょ」
斗和は膝をつく。
知っていた。
この結末を。
それでも――救えなかった。
「知ってたのに……」
拳を握る。
「……知ってたのに、何もできなかった……!」
その夜から、斗和の酒の量は明らかに増えた。
酒で薄めた藤の毒も、以前より濃くなっていく。
喉が焼けても。
胸が苦しくても。
身体に紫の斑点が増えても。
「……もっと強くならなきゃ」
酒を煽る。
「もっと……」
そんな日々が続いたある朝。
鎹鴉が屋敷へ舞い降りた。
『斗和! お館様がお呼びです!』
斗和は酒瓶を置いた。
「……あたし一人?」
『一人だけ!』
胸騒ぎがした。
「……嫌な予感しかしないなぁ」
斗和は羽織を掴む。
そして、誰にも告げず――お館様のもとへ向かった。