第3章 守りたいもの…
その夜。
斗和はうたた寝をしていると、久しぶりにあの夢を見ていた。
――血の匂い。
燃えるような痛み。
目の前で倒れていく、育手の姿。
「師匠……!」
手を伸ばしても届かない。
「嫌だ……待って……!」
鬼の爪が振り下ろされる。
そこで、斗和は飛び起きた。
「――っ!」
「斗和!」
肩を掴まれ、現実へ引き戻される。
「……実弥?」
「おい、どうしたァ」
実弥の顔が目の前にあった。
斗和は荒い息を整えながら額を押さえる。
「……夢、見てた」
「魘されてたぞォ」
「……最悪」
いつもの軽口。
けれど、手は僅かに震えていた。
実弥はそれを見逃さない。
「……何の夢だァ?」
「昔のこと」
「誰のだ?」
「秘密」
斗和は笑って誤魔化す。
実弥は追及しようとしたが――ふと部屋を見回した。
「……なァ」
「ん?」
「何でテメェ、屋敷持ってんだ?」
斗和が固まる。
実弥は周囲を見渡した。
柱でもない。
表向きは甲の隊士。
それなのに、広い敷地と立派な屋敷を持ち、使用人までいる。
「甲だからって、こんな屋敷を持てるわけじゃねェだろォ」
「……昔から使ってるだけ」
「誰の屋敷だァ?」
「……あたしの」
「だから、どうやって手に入れた?」
斗和は答えない。
実弥の疑問は、また一つ増えた。
柱ではないのに屋敷を持つ。
柱級の実力がある。
隊士たちから一目置かれている。
そして、柱合会議の内容まで知っている。
「……テメェ、本当にただの甲かァ?」
斗和は布団を引き上げ、顔を隠した。
「ただの甲だよ」
「絶対嘘だろォ」
「……寝る」
「逃げんなァ」
「おやすみ、実弥」
「チッ……」
実弥はため息を吐く。
だが、その目には以前とは違う疑念が宿っていた。
――斗和は、一体何者なんだ。
そしてこの屋敷は、何のために与えられたものなのか。
疑問は、少しずつ繋がり始めていた。