第3章 守りたいもの…
「……お前、本当に甲なのかァ?」
実弥の言葉に、斗和は目を瞬かせた。
「何それ。ちゃんと甲だよ?」
「そこが引っかかってんだァ」
実弥は腕を組む。
「甲ってのは、鬼殺隊の中じゃ最高位だ。だが、それでも柱とは別格だ」
「そうだね」
「なら聞くが――なんでテメェは、甲のまま柱と同じ任務に出て、柱と並んで鬼を斬ってやがる?」
斗和は黙った。
「しかも、俺が見る限りテメェの剣技は甲の中でも異常だ。鬼の頸を斬る速度、判断力、動き……柱と比べても大して見劣りしねェ」
「買い被りだって」
「じゃあ、なんで柱にならねェ?」
「なりたくないから」
「理由になってねェ」
即答だった。
斗和が苦笑する。
「面倒だから」
「それも理由になってねェ」
実弥の目が鋭くなる。
「柱になる実力がある。実績もある。それなのに、何年も甲のまま…」
「……」
「テメェ、わざと実力を隠してんじゃねェのかァ?」
斗和の笑顔が僅かに固まる。
実弥はさらに畳みかけた。
「那田蜘蛛山の件もそうだ。柱合会議の内容まで知ってやがる。俺たち柱しか知らねェことを、甲のテメェが知ってる」
「……噂で聞いたんだって」
「その言い訳、もう何回目だァ?」
斗和は黙り込む。
実弥は確信を深めていく。
「テメェは何なんだ?」
低い声。
「ただの甲隊士じゃねェだろォ」
斗和はしばらく実弥を見つめ――ふっと笑った。
「……実弥」
「何だァ」
「知らないほうがいいこともあるんだよ」
「それで誤魔化せると思うなァ」
実弥は目を細めた。
甲という階級。
それは斗和の実力を示すものではなく――
斗和が何かを隠すために、自ら選んだ階級なのではないか。
その疑念が、実弥の中でますます大きくなっていた。