第3章 守りたいもの…
蝶屋敷の襖が、静かに開いた。
「……斗和」
「……実弥?」
布団の中から斗和が顔を覗かせる。
その瞬間、実弥の眉間に深い皺が刻まれた。
「テメェ……」
「お見舞い?」
「何でまた倒れてんだァ」
「……ちょっと張り切りすぎた」
「張り切りすぎたァ?」
実弥が寝台の脇まで歩いてくる。
「二日前、何て言った?」
「……無茶しない」
「その翌日に無茶して倒れた奴が言う台詞かァ!」
「いやぁ……」
斗和は困ったように笑う。
「今回は、実弥がいなかったから」
「だから何だァ!」
「止める人がいなかった」
「……っ」
実弥は言葉を失った。
怒鳴りたい。
腹が立つ。
けれど、包帯の巻かれた斗和の姿を見ると、それ以上何も言えなくなる。
「……馬鹿野郎」
低く呟き、椅子へ腰を下ろす。
「死ぬ気かァ」
「死ぬつもりはないよ」
「結果的に死にかけてんだろォ」
斗和は目を逸らした。
「……ごめん」
「謝るくらいなら約束守れェ」
「はい」
珍しく素直な返事だった。
実弥はしばらく黙っていたが、やがて斗和の手を取る。
「……冷てェ」
「そう?」
「そうだァ」
手を包むように握り直す。
「俺がいねェ時ほど、無茶すんな」
斗和は少し驚いたように実弥を見る。
「……それ、無理じゃない?」
「無理でもやれェ」
「横暴だなぁ」
「うるせェ」
斗和が小さく笑う。
その笑顔を見て、実弥はようやく息を吐いた。
だが――胸の奥には、先ほど聞いた玄弥の話が残っている。
呼吸が使えなくても鬼殺隊にいる弟。
そして、自分の言葉を聞かずに身体を削り続ける斗和。
二人の姿が重なって見えた。
「……俺は、守り方を間違えてんのかもしれねェな」
「……何か言った?」
「何でもねェ」
実弥は答えなかった。
ただ、握った斗和の手を離さなかった。