第10章 最終決戦!
無惨が消滅した後も、戦場に静寂は訪れなかった。
「負傷者を優先しろ! 意識のある者は自力で歩け! 動けない者には担架を回せ!」
後藤の怒号が飛び交う。隠たちは負傷者の救護に走り、息絶えた隊士たちを丁寧に担架へ乗せていく。勝利したとはいえ、その代償はあまりにも大きかった。
「こちらにも重傷者がいます! 早く薬を!」
「包帯が足りない! 誰か持ってきてくれ!」
隠たちの額には汗が滲み、悲鳴にも似た呼び声が絶え間なく響いていた。
その一方、炭治郎は地面に座り込んだまま、呆然と朝日を見つめていた。
「……終わったんだ。本当に……」
善逸は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、伊之助の肩を掴む。
「生きてる……僕たち、生きてるよぉ……!」
「うるせぇ! 俺様は最初から死ぬつもりなんかなかったんだよ!」
そう言い返す伊之助も、立ち上がる力さえ残っていなかった。
「……みんな、よく頑張ったわね」
蜜璃は負傷した隊士に寄り添いながら、涙を拭った。伊黒も隣で静かに頷く。無一郎は疲労で青ざめた顔をしながらも、周囲の負傷者を確認していた。
悲鳴嶼は数珠を握り、静かに涙を流している。
「南無阿弥陀仏……。どうか、彼らの魂が安らかであるように……」
そのとき、玄弥が慌てて叫んだ。
「誰か! 兄ちゃんと斗和さんを診てくれ!! 二人とも意識が戻らないんだ!」
駆けつけた隠が二人の脈を確認する。
「脈はあります! ですが、出血と消耗がひどい……すぐに蝶屋敷へ搬送します!」
実弥は斗和を抱き締めたまま、意識を失っていた。隠たちが慎重に二人を引き離し、それぞれ担架へ乗せる。
「兄ちゃん……斗和さん……」
玄弥は震える拳を握り締めた。
「頼むから……二人とも、死なないでくれよ……」
担架が運ばれていく。その後ろ姿を、炭治郎たちは祈るように見送った。
鬼のいない朝が来た。
けれど、本当の意味で戦いが終わったと、誰もが笑えるようになるには――まだ時間が必要だった。