第9章 ついに……
「……妙だな」
無惨は、床に落ちた斗和の血を見つめていた。
「貴様の血が落ちた場所だけ、私の細胞が死んでいる」
斗和は黙っていた。
「藤の毒か?」
「違う」
即答だった。
無惨の目が細くなる。
「では何だ」
「……あたしにも、正確なところは分からないよ」
斗和は自分の掌を見た。
「昔からね。あたしの血は、鬼にとって毒になる」
「毒……?」
無惨が一歩踏み込む。
「くだらん。人間の血ごときで、私をどうこうできるものか」
「そう思うなら――」
斗和は刀で自分の腕を浅く切った。
赤い血が刃を伝う。
「触ってみなよ」
無惨の腕に、一滴。
次の瞬間。
ジュッ――。
皮膚が焼けるような音を立て、無惨の腕が僅かに崩れた。
「……!」
無惨の顔から、初めて余裕が消える。
だが、再生はする。
ただし――いつもより明らかに遅い。
「貴様……何をした」
「だから言っただろ」
斗和は笑った。
「鬼にとって、あたしの血は毒なんだよ」
「ならば、その血を全て抜いてやる」
「やってみな」
斗和は刀を構える。
「でもね、無惨」
その目が鋭くなる。
「一つだけ教えてあげる」
「……何だ」
「この血――あたしが死んだら、もっと厄介になるよ」
無惨の動きが止まった。
「……どういう意味だ」
「それは――」
遠くから、轟音と共に声が響く。
「斗和ッッッ!!」
斗和が振り返る。
「……実弥」
そして、無惨へ向き直った。
「アンタが自分で確かめればいい」
斗和は刀を握り直す。
「――あたしの血が、鬼舞辻無惨にどこまで効くのかをね」