第9章 ついに……
「……うん」
斗和が涙を拭い、ようやく笑った――その瞬間だった。
「――え?」
足元から、ぬるりと黒い影が伸びた。
「斗和!」
実弥が叫ぶ。
床に亀裂が走ったかと思うと、そこから何本もの触手のような異形が飛び出した。
「な、何これ――!」
斗和の腕と腰に絡みつき、一気に身体を引きずり込む。
「離せッ!」
実弥が斗和の手を掴む。
「実弥!」
斗和も必死に手を伸ばす。
しかし、触手はさらに斗和の身体へ巻きつき、無限城の闇へ引きずっていく。
「斗和ァァ!!」
実弥が刀を振るう。
ザンッ!
触手の一本が切断される。
だが――切断面から新たな触手が生え、斗和をさらに強く引っ張った。
「クソッ……!」
実弥が斗和の手を両手で掴む。
「離すんじゃねェぞォ!!」
「離さない!」
斗和も必死に握り返す。
玄弥が駆け寄った。
「兄ちゃん! 俺も!」
三人で斗和を引き戻そうとする。
だが、触手の力は異常だった。
「……っ!」
斗和の身体が、さらに闇へ沈む。
「実弥!」
「斗和ッ!!」
指先が離れかける。
実弥は必死に手を伸ばした。
「絶対に……見失わねェ……!」
「実弥……!」
その瞬間――斗和の身体が完全に闇の中へ消えた。
「――斗和!!」
実弥の叫びだけが、無限城に虚しく響く。
玄弥が呆然と闇を見つめる。
「……どこへ……」
実弥は答えなかった。
ただ、斗和が消えた場所を睨みつけ、刀を握り直す。
「……待ってろォ、斗和」
低く、怒りに満ちた声。
「今度は俺が……必ず見つけ出す」