第9章 ついに……
「さあ――効いてくれるといいんだけどね」
斗和がそう呟いた直後だった。
童磨の腕に浮かんでいた血管が、異様に黒く変色した。
「……あれ?」
童磨が首を傾げる。
次の瞬間――。
「……ッ!?」
身体が大きく跳ねた。
「ぐ、ぁ……ッ!」
童磨が腕を押さえる。
笑顔が消えた。
「何……これ……?」
傷口から、じゅうじゅうと白い煙が上がる。
皮膚がただれるように崩れ、再生しようとした端からまた焼け落ちていく。
「――再生しない?」
しのぶが目を見開く。
斗和は刀を構えたまま答えた。
「私の血は、普通じゃない」
童磨の身体が大きく痙攣する。
「ぐ……あああああッ!!」
膝をつき、床を掻きむしる。
「痛い……? 違う……これは……毒……?」
童磨が初めて苦痛に顔を歪めた。
実弥が目を細める。
「効いてやがるなァ……!」
「うん…」
斗和が頷く。
「藤の花の毒を、酒で薄めて毎日飲み続けた。長い年月をかけて――私の血そのものが変わったの」
「……なるほど」
しのぶの瞳が鋭くなる。
「だから、鬼の身体に直接入れば……」
「そう。鬼の身体を内側から蝕む」
童磨が震える腕を見つめる。
「こんなの……聞いてないよ……」
再生と崩壊を繰り返す身体。
指先が崩れ、顔の一部までひび割れていく。
「う、ぐ……あああああッ!!」
絶叫が無限城に響き渡った。
斗和は一歩踏み出す。
「実弥」
「あァ」
「今なら斬れる」
実弥が刀を握り直す。
しのぶも構えた。
「では――三人で」
童磨が苦しみながら顔を上げる。
その瞳から、初めて余裕が完全に消えていた。
「……君たち……本当に……嫌な奴らだね……」
斗和は不敵に笑う。
「褒め言葉として受け取っとくよ」
三人が同時に地面を蹴った。
――童磨へ、一斉に刃が迫る。