第2章 誰も知らない秘密
それからというもの、実弥は斗和を妙に気にするようになった。
「おい、斗和。今日は何飲んでやがる」
「いつもの酒」
「見せろォ」
「嫌」
即答され、実弥の眉間に皺が寄る。
「……怪しすぎんだろォ」
「人の酒を疑うんじゃないよ」
斗和は笑って酒瓶を背中へ隠した。
任務中に傷を負っても、実弥が駆け寄る前に自分で傷口を塞ぐ。血を流せばすぐ拭き取り、鬼の再生を鈍らせた血について聞いても、
「たまたま効いただけ」
と笑って誤魔化す。
実弥は何度も斗和を探った。
「藤の花は嫌いじゃねぇのか?」
「別に? 綺麗じゃん」
だが、藤の花が咲く場所では必ず酒を飲む。
夜、斗和がこっそり酒を飲んでいる気配を追えば、
「眠れないの?」
と何食わぬ顔で振り返られる。
酒瓶の中身を確認しようとしても、いつの間にか空になっている。怪しいと思っても、決定的な証拠は何一つ掴めない。
「……クソッ」
一人になった実弥は、苛立たしげに髪を掻いた。
斗和が何かを隠している。それだけは間違いない。
だが、何故そこまでして隠すのか。
そして何より腹立たしいのは、自分には話してくれないことだった。
「俺ァ……そんなに信用ねぇのかよォ」
思わず漏れた言葉に、実弥自身が驚く。
秘密そのものが気になるだけだと思っていた。
――だが、本当に知りたいのは、斗和が何故一人で抱えているのか。
何故、自分には話してくれないのか。
拳を握り締め、実弥は低く呟いた。
「……絶対、暴いてやる」
そう決意する一方で、胸の奥には別の思いがあった。
――無理に聞き出したくねぇ。