第8章 想い…②
「では、三人が分断された場合について決めましょう」
しのぶが紙に向き直る。
「私が単独になった場合は、童磨を探しつつ戦力を温存。無理な深追いはしません」
「俺は斗和を探す」
実弥が即答する。
「何があろうが、合流する」
「……うん。でも、それができない場合も考えよう」
斗和は紙に視線を落とした。
「それと……玄弥のことも」
「玄弥ァ?」
実弥が眉を寄せる。
「うん。もし玄弥が別の鬼と遭遇したら――」
「……随分と気にしますね」
しのぶが穏やかに口を挟んだ。
「え?」
「先ほどから何度も玄弥さんの名前が出ています。何かあるんですか?」
「別に……」
斗和が目を逸らす。
「嘘つけェ」
実弥が低い声を落とした。
「お前、最近やたら玄弥を気にしてやがる。何を隠してる?」
「……何も」
「斗和さん」
しのぶの笑顔が一段深くなる。
「私にも教えてください」
「二人して怖いんだけど……」
斗和は頬を掻いた。
「……ただ、玄弥にはまだ役目があると思ってるだけ」
「役目?」
「そう。だから、死なせたくない」
実弥の表情が険しくなる。
「……何を知ってる?」
「……」
斗和は答えられなかった。
知っている。
これから何が起こるのか。
けれど、それを話せば、未来そのものを変えてしまうかもしれない。
「……今は、言えない」
実弥が一歩近づく。
「斗和」
「お願い。今だけは、信じて」
しのぶも黙って斗和を見つめた。
やがて実弥は舌打ちし、視線を逸らす。
「……納得はしてねェからなァ」
「うん」
斗和は苦笑した。
その胸の奥では――玄弥を絶対に死なせないという決意だけが、強く固まっていた。