第8章 想い…②
夜。
屋敷へ戻った斗和は、実弥にすべてを話した。
「……っていう作戦」
「…………」
実弥は黙ったまま、斗和を見つめていた。
「つまりテメェが童磨に食われる可能性があるってことだろォ?」
「可能性はある。でも、絶対じゃ――」
「ふざけんなァ!!」
怒鳴り声が屋敷中に響いた。
斗和が肩を揺らす。
「実弥――」
「何が『可能性はある』だァ!? 食われてからじゃ遅ェんだよ!」
「じゃあ、どうしろっていうの!?」
斗和も声を荒げた。
「しのぶちゃんが命懸けで考えてる作戦なの! あたしの血が使えるなら――」
「使わせねェ!」
「なんでよ!」
「テメェが死ぬかもしれねェからだァ!」
「じゃあ、しのぶちゃんに死ねって言うの!?」
「そういう話じゃねェ!」
「同じでしょ!」
二人の間に沈黙が落ちた。
実弥は拳を握り締める。
「……俺ァ、テメェまで失うくらいなら、作戦なんざ全部ぶっ壊してでも止める」
「実弥……」
「鬼殺隊のためだとか、しのぶのためだとか、そんな綺麗事はどうでもいい」
実弥の声が低くなる。
「俺は……テメェに死なれたくねェんだよ」
斗和の胸が詰まった。
「……でも、あたしだって実弥に死んでほしくない」
「あァ?」
「だから戦うの。自分だけ助かろうなんて思ってない」
斗和は実弥の胸ぐらを掴んだ。
「一緒に生き残るために、作戦を立ててるんでしょ!」
「……」
「だったら、あたしを守ることだけ考えないで。あたしも実弥を守る」
実弥はしばらく斗和を睨んでいた。
やがて、その手が斗和の手首を掴む。
「……勝手に死ぬな」
「うん」
「絶対だ」
「……うん」
それでも実弥の怒りは、まだ完全には消えていなかった。
「ただし、作戦は俺も一緒に考える」
「え?」
「テメェ一人で決めさせるわけねェだろォが」
斗和は少しだけ笑った。
「……やっぱり、実弥には敵わないなぁ」
「当たり前だァ」