第7章 想い…
屋敷へ戻った実弥と玄弥。
門をくぐった瞬間、実弥が足を止めた。
「……斗和?」
返事がない。
庭へ目を向けた瞬間――
「……っ!」
斗和が地面に倒れていた。
「斗和さん!」
玄弥が駆け寄る。
そのすぐ傍には、一本の酒瓶が転がっていた。
実弥が拾い上げる。
「……何だ、この匂い」
鼻を近づけた瞬間、表情が凍る。
「……藤の花?」
瓶の中身から漂う、濃い藤の香り。
「まさか……原液かァ!?」
斗和の口元から血が流れていた。
「斗和!」
実弥が慌てて抱き起こす。
「おい! 目ェ開けろ!」
「……さ、ね……み……」
斗和が薄く目を開ける。
「……帰って、きた……」
「馬鹿野郎!!」
実弥の声が震える。
「何でこんなもん飲みやがったァ!」
斗和は苦しそうに息を吐く。
「……だって……さねみが……帰ってこなかったから……」
「だからって毒を飲む奴があるかァ!!」
玄弥が瓶を見つめる。
「兄ちゃん、これ……かなり濃いんじゃ……」
「ああ。こんなの、酒で薄めて飲むもんじゃねェ」
実弥は斗和を強く抱き寄せた。
「……俺が別れるなんて言ったからか」
斗和から返事はない。
身体から、力が抜けていく。
「斗和……?」
「兄ちゃん!」
玄弥が青ざめる。
実弥の顔からも血の気が引いた。
「……玄弥ァ! 医療班を呼べ!」
「はい!」
玄弥が走り出す。
実弥は斗和を抱き上げ、必死に呼びかける。
「斗和……頼むから死ぬんじゃねェぞ」
その声には、怒りなどもう欠片も残っていなかった。