第16章 挨拶へ
*
無事に挨拶を終えて、車で自宅へ戻る途中、零が口をひらいた。
「まさか、そこでが泣くとは思わなかったな。」
「うぅっ…、不覚。結婚の挨拶で泣くとか無いよね。しかも親じゃなく娘側が。
というか、零がまさか、あんなふうにかしこまって結婚の挨拶をしてくれると思わなくて、その時点で"零がかっこいい!そのセリフ録音したい!"って不意を突かれて興奮してて冷静さを欠いていたと思う。
そしたら次はお父さんの寂しそうな顔と、零の決意のこもった受け答えで、涙腺崩壊した。」
「くくくっ。忙しい感情だな。」
「もっとサラッとカラっと終わらせたかったのに涙でびっしょびしょだよ…。」
「が号泣するから僕の緊張はいっきに解れたよ。」
「零のお役に立てたなら光栄です…。
あと、両親にきちんと結婚のお願いをしてくれてありがとう。
区切りをつけられる場にできて、両親にとっては嬉しかったと思う。
もっと軽く"この人と結婚するよ~!”みないなのを想像してたの。
私の両親の気持ちをこんなふうに尊重してくれる人と結婚できるなんて、私は幸せ者だなって改めて感じたよ。」
「いや、僕がそうしたかったんだ。
僕は、ご両親のことを尊敬している。あのとき…、がテロに巻き込まれたとき、精神力の強さに助けられた。
そんな人たちに対して、慣れ合いのような挨拶で済ませたくなかったんだ。」
「どっちにしてもかっこいい。
零、私の夫になってほしい。一生大切にするから。」
「あぁ、喜んで。」
「ふふっ。これで私のものになったね。」
「とっくにのものだろ。海に行ったときに『僕の全てをあげる』って言ったじゃないか。なんでまだ受け取ってないんだよ。
あと、車の運転中じゃないときに聞きたかった。何もできないのがもどかしい。」
「零、本当に全てをもらっちゃうけど、いい?ふふっ。雰囲気で言ったなら取り消した方がいいよー?」
「雰囲気で言うはずないだろ、そんなこと。早く受け取ってくれ。」
「ありがとう。じゃあ…零の全てをもらうね。」