第33章 指輪の存在
「どうした? 顔色が悪い……震えてる…のか?」
零の声に、ようやく自分の身体へ意識が向いた。
言われてみれば、指先が小さく震えている。
震えを止めようと、ギュッと手に力を込めて握った。
寒くはないのに、冷たくなっている指先。
これは……零はもう目を覚ましたのに、私はまだ引き摺っている?
落ち着かないと。過去じゃなく、ちゃんと今を見て。
あのときも…、零が何日も帰って来なかったときもそうだった。
考えたところで防げることじゃないし、今ある幸せを噛みしめて生きようって決めたはず。
「……ごめんね。なんでもないよ。こんなときなのに考え事しちゃった。」
「なんでもないようには、とても見えない。」
優しい声。穏やかで、責めるような響きは少しもない。
だけど、今さら口にしてしても仕方ない。
「ふふっ。また、いい雰囲気をぶち壊しちゃった?」
「…、僕の前でまで、無理して笑おうとしないでくれ。偽らない君のままで…いてほしい。」
どこまでも優しい人。私が苦しかったことも、一緒に背負おうとしてくれるんだね。
私は膝の上でぎゅっと手を握り、下を向いた。
「指輪を見ると、零が目覚めない間のことを思い出しちゃう……」