第16章 挨拶へ
電話をきると、零が口を開いた。
「電話、のお母さんからか?」
「うん。来月くらいに二人とも一時帰国するから、そのときに挨拶できるかも。待たせてごめんね。」
「いや、忙しいのに申し訳ないよ。ありがとう。
それにしても、がご両親と話すときの口調が…なんか、可愛いな。
気が抜けてて。」
「娘は親にこんな感じだよ、きっと。たぶん。」
「ははっ、なんか良いな。
それで、子どもができたと勘違いされたのか?」
「そう。急いでるって言っちゃったし、誤解したみたい。
ねぇ、挨拶が終わったら、早めに入籍する?」
零は少し驚いた顔で私を見て、すぐに優しく微笑み、私を抱き寄せた。
「僕はいつでもいい。はこの日がいいとか無いのか?結婚記念日になるんだから。」
「結婚…記念日……!?」
「どうした?…まさか、今気付いたのか?」
「うん、うっかりしてた。しかも“零との結婚記念日”とかパワーワードすぎて動悸がする…!」
「動悸って、そこは“ときめいた”とかにしとけ。」
「語彙力ないから、心拍数の上昇は全部動悸で!
ところで、私達は最後にいつケンカしたっけ?」
「そうだな…── 僕が嫉妬して空気が悪くなったとき、かな?
ケンカと言うような感情的な口論や無視はなかったかも知れない。
いや。待てよ。無視というのか分からないが、が僕と距離を置きたくなって、急に連絡が取れなくなったことは何度かあったな。
あれは確か―――…」
「あーーーいい、いい。そんな、思い出さなくていいんだよ〜。ははは……もう零ったら〜、胸が高鳴っちゃうよ〜。はは……」
「何でだよ。そこは全部動悸で押し通すんじゃなかったのか?くくっ。」