第15章 たくさんの人に囲まれる人生を
「零、ごはん何がいい?和洋中なら。」
「せっかく早く帰れたから僕が作るよ。」
「いいよ、せっかく早く帰れたんだからゆっくりして?」
「じゃあ一緒に作ろうか。」
「くぅっ…!ごはん一緒に作るとか新婚夫婦みたい!」
「はははっ。本当だな。」
「和食でもいい?」
「あぁ。何作るんだ?」
「んー、煮魚と茶碗蒸しと、あとは作り置きしてたお惣菜と、適当に合いそうなの作ろうかな。」
ふたりでサクサクと夕食の支度をしていく。
「は普段のんびりしているのに料理の手際がいいな。」
「そう?何かを効率よくするのが好きだからかなぁ。零は丁寧なのに早いよね。何しても上手くできて器用だし、本当にすごいよ。」
「正直、一人暮らしだから料理はしないと思ってた。」
「あー…そうだよね。確かに自分のだけってなると面倒くささが勝っちゃって作らないかも。」
「ん?」
「ん?どうしたの?」
「誰かと住んでたのか?」
「え?何で?私、何か言った?」
「『自分のだけなら面倒くさいから作らない』 って言わなかったか?」
「……言ったね。一般論のつもりで答えただけで、誰とも住んでないよ。友だちとかが遊びにきたときに料理してたくらいかな。よく遊びにきてくれてたから。」
「……そうか」
「零……。遊びに来たのは男友達じゃないし彼氏でもない。
『友だちとか』 の"とか"に含まれてるのは家族ね。
零と住む前にこの部屋にきたことがある異性は父と業者だけだよ。」
「悪い。気を遣わせた。
それにしても…すごいな、僕がどの言葉に引っかかったのか、よく分かったな。」
「いつもの零の考えで当てはめてみたの。もしかしてずっと気になってた?広いし誰かと住んでたんじゃないかって。」
「そう考えていたときもあったな。」
「ん?じゃあ訊かずに誰とも住んでないってわかったの?」
「あぁ。色々見ているうちに、住んでいたのは一人のようだったから。」
「たとえば?」
「ここは新築で買ったマンションだろ?
服や小物は捨てればわからないが、家具や荷物の形跡は残る。使っていなかった部屋は、どちらも新品そのもののフローリングだった。クローゼットの中も使った形跡がない。
あと、の様子。同棲してすぐのころ、僕がいることで落ち着かなくなったときに確信した。」