【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第2章 隣の野生児
ノートを見て、思わず息を飲んだ。
開かれたノート一面にはなぐり書きなのか、はたまたただ字が汚いだけなのかは判断つかないけど、びっしりとひらがなやカタカナ、青木だけ漢字のような文字とさまざまなバリエーションで私の名前が書かれていた。
一瞬呪いのノートかと思うほど。
「透って漢字、難しいからちょっと書いてみて」
そう言って先の丸くなった鉛筆も渡してきた。
高校生にもなって鉛筆使ってるんだ…。
久々に握る鉛筆の感触にほんのり懐かしさを感じつつ、ほとんど埋まっているノートのほんの少し空いているスペースに『透』と書いてからノートと鉛筆を我牙丸くんに返した。
「おー、透、字、うまいな」
「いや、上手くないし、自分の名前だし」
「ふーん、これ、俺の名前」
我牙丸くんはノートを閉じるとノートの表紙を私に向ける。
表紙にはこれでもかと大きく「ガガマル」と書かれている。
字は大きさもバランスもまちまちで、まるで小学一年生が書いたみたいな字だった。
「…うん、誰も間違わなさそうだね」
「うん」
上手とも言えず、下手とはもっと言えず、そんな曖昧な返しだったのに我牙丸くんはどこか満足気に頷いてノートを机にしまった。
そして再びこちらを向く。
今度は何を言われるのだろうと身構える。
「透、さっきの授業のノート、見せてくれ」
「?」
だってさっきの時間、ずっとノート取ってたじゃん。
いや、まさか。
「…さっきの授業中、ずっと私の名前書いてたの…?」
「うん」
訳がわからない。
え、これ、私のせいになる?
いや、これは自己責任じゃない?
え、でもノート見せないっていうのはちょっとやり過ぎ?
いや、今ノートを貸していつ返ってくる?
今日返ってくる保証ある?
私はさっきの授業のノートと財布を掴むと校舎の端にある購買部まで走った。
そして、今日の授業の部分だけコピーを取るとまた走って教室まで戻った。
帰りの階段でかなり息が上がる。
教室に戻る頃には息も絶え絶え。
でも、六時限のチャイムには間に合った。
「…これ…コピー…取ってきたから…」
整わないままの呼吸でそれだけ言って我牙丸くんに紙を押しつける。
我牙丸くんは「お、ありがと」と特に喜ぶでもなく受け取るとそのままズボッと机の中に突っ込んだ。
私の全力疾走を返してほしい。