【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第2章 隣の野生児
「透、音楽好きなのか?」
我牙丸くんはイヤホンを指すように自分の耳をチョンチョンと指差した。
「あ…えっと…うん」
いつもあれだけ音楽を聴いていて、「それほど好きじゃない」とか「人と関わりたくなくて聴いてるだけ」なんて言えない。
「ふーん。何好き?」
「えっと…特に好きなモノはなくて、最近の曲を適当に聴いてる感じかな…」
これを「音楽好き」というのかわからないけど、咄嗟に訊かれたらそんな回答しかできなかった。
「そうか」
再び沈黙。
自分の会話を続ける能力の低さにげんなりしながら、この時間はいつまで続くんだろうとぼんやりと考えてた。
そしたら、また我牙丸くんから「透」と話をしてくれる。
「透は一人が好きなのか?」
「え…?」
こんな直球で訊かれるとは思わなかった。
いつもどんぐり眼で貫かんばかりに見つめてくるくせに、今は私と横並びで目の前に生えてる草木を眺めている。
今ここで「一人が好き」と言ったら我牙丸くんは私を放っておいてくれるんだろうか。
私のところから離れて行くだろうか。
「…なんで、そんなこと…訊くの?」
訊かれたことに答えないで、質問を質問で返してしまった。
「ん?なんか透、いつも一人で昼飯食べてるから」
確かにここの場所を見つけるまではいつも教室で一人でお弁当を食べてた。
でも、一週間前まで我牙丸くんはほとんど昼休みは教室にいなかったじゃん。
今までそんなこと気にもしてなかったじゃん。
どうして、今更そんなことを何ていうこともないように言ってくるんだろう。
「…うん。私、一人がいいんだ」
気づいたら我牙丸くんの横顔にそう告げていた。
そう言えば、我牙丸くんは「そっか」で済ませてくれそうだから。
我牙丸くんはゆっくりこちらに顔を向けて、どんぐり眼に私を映して少し止まった。
たぶん一秒くらい。
でも、すごく長く感じた。
我牙丸くんは小さく息を吸うと
「そっか。わかった」
そう言って立ち上がり、こちらに背を向けてのっそりと熊みたいに歩き始めた。(いや、熊は二足歩行しないけど)
その時初めて、あの人こんなに大きかったんだって思った。
こんなに大きな人が私の横で膝を抱えるように小さくなって一緒に動画を見てたのが嘘みたい。
去っていく大きな背中に何故か喉がキュッと締まった。