【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第5章 噂の野生児
あからさまなため息をついてからお弁当を食べるのを再開する。
と言っても、あとはいつも最後に食べてる卵焼きを残すのみ。
お弁当を開けた時から気づいていたけど、いつも一つの卵焼きが今日は二つ入っている。
これが私へのサービスでないことは隣から注がれる視線が物語っている。
必死で気づかないふりしてるのに隣から
「透ー」
と呼ばれては無視できない。
「なに?」
「甘い卵焼き、くれ」
やっぱり…
さっき我牙丸くんの卵焼きをもらっている身としてはかなり断りづらい。
そして、それ見越したように卵焼きを二つ入れるお母さんよ。
一つしか入ってなかったらまだギリギリ断れるものを…。
「…いぃよ」
それを聞くなり私がお弁当箱を差し出すよりも早く我牙丸くんは卵焼きを一つ摘んで口に放り込んでいた。
「うん、ウマイ」
「…そーだねー」
なんで二人並んで卵焼き食べてるんだか。
さっきまで人の目が怖くて仕方がなかったのに。
まぁ、ここは人の目がないからなのかもしれないけど。
「…私って小さいなぁ」
また小さく呟いて、
「おー。でも、身長はもうどうにもなんないだろ」
って返される。
「いや、だから違うんだって」
「?」
ツッコんだところで我牙丸くんはどんぐり眼で私を見つめるだけで、そんなどんぐり眼を見ているともういいやって気持ちになってしまう。
「そろそろ戻ろっか」
お弁当箱を片付けて私が立ち上がると我牙丸くんも立ち上がった。
立ち上がった我牙丸くんはやっぱり大きくて、一緒に歩いたらまた注目されるんじゃないか、何か言われるんじゃないかって不安がよぎった。
一瞬、「私、寄っていくところあるから」って別々に教室に戻ろうかとも思った。
けど、そのまま何も言わないで教室に向かって歩き出した。
我牙丸くんは半歩後ろを黙ってついてきて、途中の水道で手を洗って、今日も私のハンカチを貸した。
明日からはもう一枚ハンカチを持ってこようと心に決めた。
そして、いよいよ教室まで続く長い廊下を歩く。
やっぱりいろいろな人が見ているようだ。
我牙丸くんもだし、私も。
昨日は三歩先の床を見ながら歩いた。
けど、今日はまっすぐ前を見て歩いてみた。
だから、誰が視線を送っているかが見える。
でも頑張って前を見た。
だって、誰に見られたって我牙丸くんは我牙丸くんだし、私は私だから。
