【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第5章 噂の野生児
「あー、そうか」
我牙丸くんはそう言って私を掴もうとして差し出した手と私の手首を何回か見回した後でやっぱり私の手首をガッと掴んできた。
「え、なんで?」
もう心の声がそのまま口から出た。
「俺が透のこと掴んでたら透が転びそうになっても引っ張れば透は転ばないって思った」
「いや、それは我牙丸くんがゆっくり歩いてくれればいいから」
「あと、透のことも置いてかないで済む。迷子にもならない」
「いや、だから、それも我牙丸くんがゆっくり歩いてくれればいいから!それに我牙丸くんのこと見失うことないと思う!」
「おー、そんじゃ行くぞー」
いや、何が『おー』だよ!
それでも手首離さないんかい!
今日の我牙丸くん、話の通じなさがいつもの1.5倍だ…
再び我牙丸くんが半歩前を歩き始めて、校門まで歩く。
周りには意外に人は少ないんだけど、それでもすれ違う人にはチラチラ見られる。
その人たちの目に私たちがどう映っているかわからないけど、どうか非ぬ疑いだけはかけないでいただきたい。
小さくため息をついて、ふとグラウンドを見ると今日はガランと人がいない。
そういえば。
「我牙丸くん、今日、部活は?」
「明日練習試合だから今日は休みだ」
「あ、そうなんだ…」
だから佐藤くんも鈴木くんも教室にいたんだ。
明日練習試合なら早く家に帰って試合に向けて調整するための部活休みなんじゃないのかと思うけど、我牙丸くんはどこに行こうというのか。
我牙丸くんのことだから買い物行こうとかカラオケ行こうとか、そんな普通の高校生が放課後しそうなことに連れて行くわけではないと思う。
けど、どこに連れて行かれるかわかったもんじゃない。
どうかただ一緒に下校する、最悪私を家まで送ってくぐらいにしてほしい。
いや、そうなったら我牙丸くんのことだから絶対家に上がっていくな…
またお母さんが喜んじゃうじゃん…
そんなことを考えている間に校門を過ぎて、向かったのは私の家の方角とは真逆だった。
え…マジでどこに行くの?
「と…ところで我牙丸くん、今日はどこにいくの?」
優しく聞きたいのに口角が上がらない。
「ん?あー、俺んち」
は?
予想の真逆じゃん!
理解の追いつかない頭で来週から広がる噂は「野生児が女の子を拉致した」にしてほしいと切に願った。
