【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第5章 噂の野生児
我牙丸くんはかぶりつく一歩手前で「あっ」と何かに気付いて手が止まった。
そして、今まさに食べようとしていたおにぎりを私の方にズイッと差し出してきた。
え…私、そんなに物欲しそうな顔してた…?
いや、してないと思う。
なんならちょっと引いてたし…
でも、我牙丸くんはそんな私はお構い無しに自分がかぶりつこうとしていた場所を指差した。
「透、ここ食ってみろ」
何故だが場所指定で勧められる。
「え、いや、いいよ。私、お弁当あるし」
「一口だけ。ここだけ食って」
「え…いや…」
次はどう断ればいいのかすぐに出てこず、おにぎりを差し出す我牙丸くんを見る。
どんぐり眼と目が合う。
何か…目がマジ…
怖い…
一口食べなければ済まなそうで…
私は恐る恐る口を開いた。
「もっと口開け」
ちょっとかじる程度にしようと口を開いたらそう催促された。
仕方なくもう少し開く。
「もっと大きく」
それでも足りないとまだ催促されてもうヤケになって歯医者に行ってもそこまで開けないくらい思いっきり開けてやった。
そしたら、そこにおにぎりを思いっきり押し込まれた。
「むぐっ!」
無理矢理おにぎりを口いっぱい頬張らせられて一瞬息が詰まりかける。
飲み込むために一生懸命咀嚼する。
すると、口の中には甘いお米の味と良い塩梅の塩加減、海苔の香りと出汁の効いた卵の味。
「おいひい…」
まだ口の中に残っている状態で話をするのはお行儀が悪いけど、気がついたら呟いていた。
「俺んちの卵焼き」
そう言って我牙丸くんは私の歯型がついたおにぎりを何の抵抗もなくバクリバクリと五口くらいで食べてしまった。
結局、私が口に詰め込まれた一口と後に残されて我牙丸くんが食べたおにぎりを飲み込んだのは二人同時だった。
「我牙丸くんのうちの卵焼きって甘くないんだね」
「おー」
「でも、なんかすごく美味しかった。卵の味がすごくするっていうか」
「あー、その卵、俺んちで飼ってる鶏のだからたぶん売ってるやつより美味い」
「え、そうなの?すごい」
「そうかー?」
我牙丸くんって山で猪食べるわ、卵は家の鶏だわ、自給自足の生活なんだろうか?
「じゃあ、お米も作ってたりするの?」
「いや、米は作ってない。どっかから買ってる」
「あ…そうなんだ」
全部が全部ってわけでもないらしい。