【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第2章 隣の野生児
状況がよく分からなくて私は固まった。
隣の人は尚も無言で私を見ている。
無表情で何考えているかわからない。
根元は黒いのに毛先に向かって銀色になっている髪を頭のてっぺんで一つにまとめている。
で、左耳にだけイヤホン。
それは私のなのか、それとも彼もたまたま同じものを使っているのかがわからない。
だから、「それ、私の?」なんて気軽に聞けなかった。
そうこうしているうちに右耳に入っているイヤホンに流れていた曲が終わり、また違う曲が流れ始めた。
すると、隣の人は
「あ」
と何かを思いついたように声を上げた。
「この曲、聞いたことある」
確かに今流れている曲は飲み物のCMに使われている曲でどこででも耳にする有名な曲だった。
でも、今このタイミングでそれを言うっていうことは…
「それ、私のイヤホン?」
ようやく確認の言葉を吐けた。
「ん?これ?」
「はい」
「うん」
「え…なんで?」
なんで人のイヤホンを普通に耳に入れてるのか。
そもそもなんでイヤホン持ってるのか。
もしかして耳から抜いたのもこの人なのか。
たまたま落ちたから入れたのか。
いや、普通、落ちたからって自分の耳に入れないでしょ。
「いや、何聞いてるのかなって」
「……」
「気になったから、借りた」
「は?」
「?」
「すみません…それって私の耳から取ったってことですか?」
「うん」
「は?」
本日2回目の「は?」が出た。
普通、何聞いてるか気になったら「何聞いてるの?」とか訊かない?
いきなりほぼ寝てる女子の耳からイヤホン抜かなくない?
で、それ、耳に入れなくない?
完全に意味不明すぎて、訳がわからなすぎて、言葉も出ない私の横で、耳に入れたイヤホンに更に手を添えて「これ、誰が歌ってるんだっけ?」とか「何ていう曲だっけ?」とか視線を斜め上に上げながら曲に聞き入っていた。
そんな中でこんなことを言うのも申し訳ないんだけど、けど言わなきゃどうしようもないから言わせてもらう。
「すみません、それ、返してもらえますか?」
彼はキョトンとした顔で私を見た。
そして、自分の左耳を指差して、
「これ?」
と訊いた。
「はい、それ」
「ん、はい」
彼は特に何を言うでもなく、耳からイヤホンを外すと素直に私に返してくれた。