第7章 間章『第三者の観測』前編
星宮が時計を見る。
「あ、もうこんな時間」
「練習か?」
「はい」
「今日は何時までだ?」
「四時くらいです」
「そうか」
「片付けしたら、四時半くらいかな」
フルートケースを持ち直す。
「先生」
「何だ?」
「帰り、また寄ってもいいですか?」
「構わない」
「じゃあ四時半くらいに」
「ああ」
「コーヒーお願いします」
「自分で淹れろ」
「えー」
「僕は君の給仕係じゃない」
「友達に冷たくないですか?」
「友人と給仕に何の関係がある?」
「冷たいなぁ」
「砂糖はそこにある」
「二つ入れてくださいね」
「それくらい覚えている」
「…………」
星宮が一瞬黙った。
「何だ?」
「いや」
少し嬉しそうに笑う。
「ちゃんと覚えてるんだなと思って」
「以前聞いたからな」
「ふふ」
「何がおかしい?」
「何でもないです」
星宮は扉へ向かう。
「じゃ、行ってきます」
「ああ」
「草薙さん、内海さん、失礼します」
「ああ」
「いってらっしゃい」
内海が自然にそう返す。
「ありがとうございます」
星宮が笑う。
扉がガチャりと閉まった。