第6章 『変数る』
第十三研究室。
戻ってきた湯川は、
手にしていた資料を机へ置いた。
「…………」
先ほどの光景が、頭に残っている。
星宮君と隣の男子学生。
同年代、恐らく同じ学部。
親しい関係の様子だった。
「…………」
何もおかしくない。
彼女は大学生だ。
同性の友人もいれば、異性の友人もいる。
当然のことだ。
湯川は椅子に座り、論文を開いた。
数行読む。
「…………」
先ほど、
あの男子学生が星宮君の肩に触れていた。
「…………」
だから何だ。
友人同士なら、
その程度の身体接触は珍しくない。
少なくとも。
自分が検討する価値のある事象ではない。
再びページをめくる。
「…………」
名前は知らない。
学部も、学年も、彼女との関係も。
「…………」
湯川は眉を寄せた。
何故、知らないことが気になるのか。