第5章 『識別る』
火曜日の午後三時、
いつもの場所で湯川先生に話しかける。
「先生」
「何だ?」
「質問があります」
「珍しいな」
「失礼ですね」
「普段、質問されるのは僕の方だ」
「まあ、そうですけど」
私はフルートを持ったまま、先生を見る。
「私たちって、何なんですかね」
「…………」
先生が止まった。
「何とは?」
「関係」
「関係?」
「この前、部活の子に聞かれて」
──流石に、
『彼氏?』
とは言えなかった。
「先生と学生だろう」
「やっぱりそうですよね」
「ただし」
「はい?」
「僕は星宮君に講義をしたことがない」
「ですね」
「君は僕の研究室の学生でもない」
「はい」
「専攻も違う」
「そうですね」
「なら厳密には、一般的な教員と学生の関係とも異なる」
「…………」
先生が本気で考え始めた。