第5章 『識別る』
「ストップ!!」
演奏が止まる。
「木管、今のところもう一回確認しよう」
私は楽器を下ろした。
「はーい」
隣のフルートパートの子と譜面を確認する。
「ここの入り、ちょっと遅かった?」
「かも。次気をつける」
「了解」
そう言って譜面へ目を戻しかけたとき──。
「……ねえ」
「ん?」
隣の子が、私の肩を軽く叩いた。
「ちょっと、あそこ」
「何?」
「外、なんか先生っぽい人いる」
指された方へ、何気なく目を向ける。
「…………」
窓の向こう。
少し離れたところに、一人の男が立っていた。
今日は、いつもの白衣姿ではない。
シャツの上に、濃い色のスーツベスト。
研究室の近くで見かける姿とは、少し印象が違う。
それでも、
見間違えるはずがなかった。
「……湯川先生?」
ぽつりと呟く。
瞬間。
「え!?」
隣の子が勢いよくこちらを向いた。