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【G@lileo】音色の方程式

第4章 『交差る』




 「今日は集中力が低いな」

 「…………」


 十分後。
 フルートを下ろした私は、湯川先生を睨んだ。


 「誰のせいだと思ってるんですか」

 「僕が何かしたか?」

 「してませんけど」

 「なら僕のせいではない」

 「……そうですね」


 腹が立つ。
 全体的に先生が正しい。


 「今日は音の立ち上がりが不安定だ。それから——」

 「先生」

 「何だ?」

 「今日は分析しないでもらえます?」

 「何故?」

 「なんとなくです」

 「非合理的だな」

 「人間には、なんとなくっていう日があるんです」

 「僕にはない」

 「でしょうね」


 即答だった。
 あまりにも先生らしくて、思わず笑う。

 そのとき——。


 ぽつ。

 譜面の上に、小さな染みができた。


 「……え?」


 降ってきた空を見上げる。

 ぽつ。
 頬に冷たいものが落ちた。


 「あ」


 ——雨。


 「嘘」


 春の空から、突然雨粒が落ちてきた。


 「ちょ、待って!!」


 慌てて譜面を回収する。

 楽器、ケース、譜面台。
 どれも濡らすわけにはいかない。


 「最悪……!!」

 「貸せ」

 「え?」


 伸びてきた手が、私の譜面台を取った。


 「先生?」

 「楽器をしまえ。濡れるだろう」

 「あ、はい!!」


 急いで楽器の水分を取り、ケースへしまう。
 その間にも、雨脚はどんどん強くなっていった。


 「行くぞ」

 「どこに?」

 「研究室だ」

 「え?」

 「ここから一番近い」

 「でも——」

 「楽器を濡らしたいのか?」

 「嫌です」

 「なら来い」


 先生はそれだけ言って、
 私の譜面台を持ったまま歩き出した。


 「待ってください!!」


 フルートケースを抱え、私はその背中を追った。



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