第3章 『誤差る』
「講義に女子がめちゃくちゃ集まるって有名じゃん。理工の学生でもないのに、わざわざ聴講したがる子がいるくらいだよ?」
「へえ……」
「へえ、じゃない!!」
「だって授業受けたことないし」
「あんた本当にそういうの興味ないよね……」
友人が額を押さえる。
そして、すぐにこちらへ身を乗り出した。
「で? なんであんたが湯川先生と知り合ってんの?」
「私が練習してると、たまに来る」
「は?」
「フルート吹いてると」
「待って」
友人が片手を上げた。
「もう一回言って」
「私がフルート吹いてると、たまに湯川先生が来る」
「何しに!?」
「知らない」
「知らない!?」
「本人は、たまたま通りかかっただけって」
「…………」
友人の目が細くなった。
「何、その顔」
「いや」
じっと見られる。
「それ、本当にたまたま?」
「たまたまでしょ」
「毎回?」
「毎回じゃないよ」
「でも何回か来てる?」
「まあ」
「向こうから話しかけてきた?」
「最初はそう」
「はあ!?」
「だから声大きいって!!」
「いやいやいや!!」
友人が私の腕を掴んだ。
「湯川先生から話しかけてきたの!?」
「うん」
「何て!?」
「その日、同じところ十七回吹き直してたって」
「…………は?」
「だから──」
「数えてたの!?」
「うん」
「湯川先生が!?」
「そう」
「十七回!?」
「らしい」
友人が口を開けたまま止まる。
「……そう考えると、やっぱりちょっと変だよね」
「いや、そこじゃないって!!」
「え?」
「あんたそれ、狙われてんじゃないの?」
「…………は?」
今度は私が止まった。