第2章 『観測る』
──翌日。
水曜日の午後三時。
第十三研究室にて、
湯川は数式を書いていた。
静かな研究室、紙をめくる音、キーボードをたたく音、時計の針が時を刻む音、
──いつも通りだった。
「…………」
ペンが止まる。
湯川は窓の外を見た。
……何も聞こえない。
数秒して、再び数式へ視線を戻す。
さらに数分、
「…………」
また、手が止まった。
窓を見る。
当然、何も聞こえない。
湯川は僅かに眉を寄せた。
昨日は火曜日、今日は水曜日。
彼女があの場所で練習をするのは、主に火曜日と木曜日。
今日は来ない。
そのことは分かっている。
分かっているのに。
妙に静かだった。
「…………」
湯川は立ち上がる。
窓辺まで歩き、開け放たれていた窓に手を掛けた。
そして、閉める。
音が聞こえないのなら、開けておく必要はない。
合理的な判断だった。