第3章 3
彼女の部屋の扉を閉め、あなたとエナードは廊下に出る。
胸をなでおろし、彼の助けに改めて感謝すると、彼は何か言いたそうに見下ろしてきた。
「おばあさんの部屋、テレビの音がすごかったですよ。……あなたの部屋に、かなり響いてるんじゃないですか」
怪訝な表情で問われて、言葉に詰まった。
「あ、はい。結構大きいですね」
「……苦情を言いづらいなら、僕が言いましょうか」
「いえいえ! 違うんですよ」
そんな風に言ってもらえて、彼の親切心を今日二度目に感じたが、あなたは首を振る。
理由を言うのは少しためらわれた。
「実は……大きな音があると安心するというか。一人暮らしなので。……あ、夜十時にはおばあさんも寝るのか静かになるから、ちょうどいいんですよ」
あなたが照れくさそうにそう明かすと、彼は眉間にしわを寄せ、言葉が引っ込んだ様子だった。
引かれてしまったか――。
そう密かに沈んでいると、そうではないようだ。
「寂しいんですか」
急にそんなことを言われて、顔を上げる。
「……まあ、少しだけ。へへ」
いったい、たいして親しくもない隣人男性に何を言ってるのだろうと思ったが、その後はとくに会話も広がらなかった。