第6章 6
週末になるとエナードは本当にあなたの部屋にやってきた。
夕食を済ませた夜の八時頃のことだ。
休日で金髪をさらっと崩した彼は、服装もシャツにスラックスと、綺麗めだがゆったりしていた。
「こんばんは。……これ、ノンアルコールワインです」
「わあ、ありがとうございます。一緒に飲みましょうね」
お礼を言って受け取り、少しだけお洒落をしたあなたは彼をすぐそばのリビングへと招いた。
茶色のお気に入りのソファは三人がけで、あなたと彼は真ん中を開けて座る。
ローテーブルにはグラスが並び、チーズやサラミ、スナック菓子などを少しずつ置いた。
そんなにロマンチックな雰囲気ではない。
彼もそのほうがいいだろうと、一緒に映画を見ることに集中しようと思っていた。
「そういえば、本当に僕があなたの部屋にお邪魔して、大丈夫だったんでしょうか」
「大丈夫ですよ、もちろん」
「……そうですか。恋人とか、いないんですか」
彼にそう言われてドキっとしたが、あなたは気恥ずかし気に明かす。
「いないですよ。彼氏いるのに男性を家に誘うほど、非常識じゃないです」
笑いながら言うと、彼は静かに納得していた。
「エナードさんは? ……あっ。もしいるのにお誘いしてたらすみません!」
「いませんよ。……こんな性格ですから」
彼は自嘲気味に答えたが、あなたはすぐに反論したくなり身を乗り出す。
「ええっ? こんなに素敵な人じゃないですか! お願いしたら助けてくれたし、雑草取りでも危ないとこ担当してくれましたし。廊下もピカピカだったし。とっても優しい方ですよ、エナードさんって」
これまで見た、ぶっきらぼうながらも誠実な彼の姿を力説すると、彼は一瞬身を引いていた。
薄い青の瞳は、戸惑いを浮かべている。
「……ありがとうございます。優しいのはあなただと思いますけどね」
「そうですか? お世辞じゃないですよ今の」
にこりと笑いかけると彼は、「いや……」と言いかけたが、胸にしまったようだった。