第5章 5
「ええ……映画一緒に見ようっていった仲じゃないですか。ひどいですよ、エナードさん…」
むっとして悲し気に言うと、あなたは二人に頭を下げてその場から去ろうとした。
女性は驚いていたが、あなたが彼を追い越して二階へ上っていくと、彼ははっとなった表情をした。
「まっ……さん!」
あなたがすぐ上の二階で、鍵をがちゃがちゃやっていると、初めてそんなふうにエナードに名前を呼ばれた。
瞬きをして振り向く。
するといつの間にか、彼はあなたの後ろに立っていた。
「違います、そういう意味じゃ……怒ってるんですか」
小さく肩を上下させ、息を切らせて尋ねられ、あなたは目を丸くする。
「い、いや」
「――ちょっと待ってください」
エナードは何かに気づき、階段の手すりから下を見下ろした。
すると管理人女性がドアの隙間から聞き耳を立てていたようで、彼は舌打ちを我慢した。
「ちょっと来てください」
「へっ」
彼が自分の部屋の鍵を開けたので、あなたはいいのかと思いつつ、吸い込まれるように玄関に入る。
室内は自分の部屋よりも広く、男性の一人暮らしとは思えないほど、お洒落でモダンにまとまっていた。
すぐそこにあるリビングは白と木を基調としており、間接照明にもこだわっているようだった。
「うわあ、素敵なお部屋ですね。うちと全然違う」
「そうですか。……じゃなくて」
彼はあなたの腕にそっと触れて、まっすぐに焦りの滲む瞳で見つめてきた。
「さっきのは違いますから。彼女に誤解をされたら、また違う住人に喋られてしまうと思って。あなたに迷惑がかかるでしょうし」
「いえ、迷惑じゃないですよ、別に」
そう穏やかに答えると、彼は言葉に詰まる。
また考えこんでしまったので、話題を少し変えてみた。