第4章 Lazy Night
「ただいまー」
気の抜けたようなリカのいつもの言葉。
誰も待ってない静かな自室に向かって挨拶をする。
それに対して俺はこう続ける。いつも通り。
「おかえりー」
「なんであんたが言うの?
お邪魔しますとか、そういうのでしょ」
「ただいまって言われたから条件反射」
「あんたいっつもそれ。
礼儀あるんだかないんだか」
自分の靴を脱ぐ前に、リカが脱ぎ捨てたパンプスを揃える。
いつ使ったかわからない出しっ放しの傘をシューズクロークの中に押し込む。
いつからつけっぱなしかわからない、玄関ホールの電気を消す。
ここまでやって、やっとこの玄関での俺のいつも通りが終わる。
「つかれたー」
そう言いながらリカは服を脱ぎだした。
目の前に俺がいるのに構いもしない、恥じらいもしない。
俺はその横を通り抜けてリビングの奥に向かった。
「お前さ、なんなの?」
いたたまれず、声をかけるも彼女は何の疑問も抱かずあっけらかんと答えた。
「うちに帰ったんだから着替えるでしょ。
シャツ着て過ごすとかダルすぎ。
置いてったTシャツあるけど?」
「いらね」
「あれ、めっちゃ生地いいよねー」
「俺の着てんのかよ」
「あるから」
俺が置いていった服を見て感傷深くもならず、
かといって捨てるわけでもない。
あたかも最初からそこにあったかのように、自分のものにしていた。
そんなものだから、相手にしたって無駄なことはわかっている。
目の前で服を脱ぎかけでグダグダしてるリカをよそ目に、
持ち帰ったテイクアウトとコンビニで買ってきたものを
リビングのローテブルに置き、
ジャケットをその辺にあるハンガーにかけてから、ソファに座った。
「お前さー、そういうの歴代彼氏全員並んでてもやるのかよ」
ちょっとした嫌味を言うつもりだった。
なのに、それを振りとして受け取ったらしい。