第3章 Lazy Ex
「あーあ、お気に入りだったのに……」
テイクアウトができるのを待つ間、
店外の喫煙所でリカは早速箱から紙巻きタバコを抜き取った。
カチリとジッポの音が鳴り、苦い煙が夜の空気に溶けていく。
その横顔を見つめながら、
さっきからずっとリカの電子タバコトークで自分を誤魔化していた胸の奥に引っかかっていたトゲが、
喉まで競り上がってくるのを抑えきれなくなった。
「……お前さ」
「ん?」
「さっきの駅前。『もう違う』って、即答すんの何? 早すぎだろ」
煙を吐き出しながら、リカは心底不思議そうに俺を見上げた。
「え? 事実じゃん。
振った女がまだ自分のこと彼氏とか思ってたら怖くない?」
「……確かにそうだけど」
ぐうの音も出ない正論。
振った側の面をして、
計画的にここまで追いかけてきたはずの俺の口が、重く塞がれる。
「それよりさ、せっかくだしコンビニでお酒も買ってこよ。
明日仕事いけないんだよねー」
「行きたいみたいに言うなよ」
「私のこと待ってくれるのは仕事だけだからね」
「社畜。お前のかわりなんていくらでもいるだろ」
だから、無理すんな、って言えないまま。
そんなことを言える立場じゃないことくらい、自分が一番分かっていた。