第3章 Lazy Ex
「あーあ、締め出されちゃったねー。仕事山積みなのに」
「仕方ないですよ、労基あるんだから」
リカみたいなこと言ってる奴がいる。
「待ち合わせなんで帰ってーダルいから」
「だるくなくない?」
「だるくなくなくない」
古典的な漫才みたいなやり取り。
「ほら、あの人。私待たせてるんで」
電子タバコが震えた、それを咥えながら顔を上げると
リカみたいなこと言ってる奴はリカだった。
隣には上司なのか、仲良さそうにダル絡みしていた。
ついリカに似た奴だと聞き耳を立ててしまったことに後悔しても遅い。
聞こえないようにしようとしても会話が耳に入ってきてしまう。
頑張らないと聞き取れない距離なはずなのに
一度入ってしまった声はすぐには消せない。
「あの、タバコ吸ってる背の高い人?彼氏?」
「いや、もう違う」
あいつは即答してた。
俺は昼間上司に彼女じゃない、って否定せずに濁してたのに
彼女は俺のこと、もう彼氏じゃないって即答してる。
「は?別れた女に態々会いに来るような顔面してないじゃん」
「なにそれ」
「振ったの?振られたの?」
「振られた」
「振られてといて会ってんのかよ、お前無様過ぎて草」
「草言うな。老害」
可哀想にと頭、撫でられているし、
何より会話が聞かれてないと思ってる様子だ。