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愛しのサプフィール

第14章 訪問


冬の終わり頃。サプフィールを乗せた箱馬車は近隣にあるザイツェフ男爵領に入った。
コズロフ領とさほど変わらない牧歌的な景色を眺めながら、ザイツェフ邸に着くまでゆっくり座って過ごす。
「……」
暇潰しに、マフに両手を通したまま毛に顔を埋めた。滑らかな毛が肌を撫で、吐いた息の熱がその中に籠もる。
「あとどれくらいで着きそうかな?」
「少々お待ちを」
向かいに座るソーニャが小窓を開いて御者に尋ね、またサプフィールに向き直る。
「30分程だそうです」
「よかった。そう長くはないね」
そうしてソーニャと雑談を交わしている内に馬車はザイツェフ家の屋敷に到着し、サプフィールはカストーリヤに出迎えられた。
「サプフィール様、ようこそおいでくださいました」
「お久しぶりです。姉妹ともどもご息災ですか?」
「ええ、変わりありません。どうぞこちらへ」
外套や防寒具をソーニャに預け、サプフィールはカストーリヤに連れられて温室に入る。
中央にティーテーブルと3人分の椅子、そして茶や菓子の準備がされていた。
「そういえば、ポルーシャ嬢はどちらに?」
「共にお出迎え出来ず申し訳ございません。サプフィール様がいらっしゃる前に妹を呼んでくるようメイドに探しに行かせたのですが、まだ手こずっているようです」
席に座りながら話していると、温室の裏口からポルーシャが入ってきた。冷たい外気に晒されていたためか、リンゴのような真っ赤な頬をしている。
「お久しぶりですわ、サプフィール様〜。またお会いできて嬉しいです」
2人に駆け寄りながら言うポルーシャをカストーリヤが諫める。
「ポルーシャ、まずは遅刻を詫びなさい」
「ごめんあそばせ。ちょっとお散歩をしていましたの」
「お気になさらず……あっ、スカートが汚れてしまっていますね」
ポルーシャのドレスの裾に土汚れが付いていた。よく見たらところどころに藁も付いている。
「ポルーシャ、そんな格好でいてはダメよ。着替えていらっしゃい」
「はぁい」
カストーリヤに言われ、ポルーシャがのこのこと温室を出ていった。
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