第13章 お下がり
「無事な部分だけを使うのでしたら、仕立屋に相談する価値はあるかと存じます。ただ、1点から取れる毛皮はそこまで多くはなさそうです」
少し悩むように執事長が言う。
「3点から少しずつでも取って1つの防寒具にするのはどうだ」
「しかし質感や毛足が異なります。機能上は問題ないとは思いますが、見た目などがどうなることか……」
「たしかにそれぞれ違うが……このまま、棄てるよりかは……」
言葉尻が弱々しくなるのを聞いて、執事長はゆっくりと頷いた。
「かしこまりました。可能な限り旦那様のご希望に添って仕上がるよう、仕立て屋にもよく申し伝えましょう」
「……ああ。頼む」
執事長の返事を聞いて、スヴェトザールは安堵した表情になった。
それから話し合いを重ね仕立て屋に発注し、数週間後に完成したものが届いた。
完成品を確認し、それを一度箱にしまい直してからスヴェトザールはトレーネスの部屋を訪ねる。
「トレーネス、今いいか」
「は、はい。何でしょうか、お父様」
トレーネスは乳母とチェスに興じているところのようだった。
乳母が一礼し、静かに退室する。
「これを……お前に」
スヴェトザールが持っていた箱を差し出すと、トレーネスはそれを両手でおずおずと受け取る。
そのままスヴェトザールが蓋を開け、中身を取り出してトレーネスの首にゆっくり巻く。
「ありがとうございます。えっと、毛がとっても気持ちいいです」
大きめの毛皮の襟巻きに包まれたトレーネスがはにかみながら笑う。
それを見てスヴェトザールが満足げに頷いた。
「これから少しずつ寒くなる。使ってくれると嬉しい」
「わ、わかりました。いっぱい使います」
「ああ。大人になっても使えるサイズにしてあるから……大事にしてくれ」
かつて妻を暖めていたもの。息子のことも凍てつく冬の寒さから守ってくれるだろう。
スヴェトザールはトレーネスの首から襟巻きを外し、また箱に戻した。