第12章 冬毛
同じように、表面の毛を指先でそっと掻き分けて内側に触れる。
「わ……あったかい」
細く柔らかな毛に指が包まれた。表面を触っているときとは違い、馬の体温がじんわりと伝わってくる。
「もこもこしてますね」
「ええ」
毛のさらに下に分厚い筋肉を感じる。サプフィールがヴェスニャクの様子を窺うも、特に気にせず飼葉を食べているようだった。
「首以外も触ってみていいですか?」
「いいですよ。肩と背中、あとはたてがみ辺りを試してみましょう……少し待っていてください」
スヴェトザールはヴェスニャクに革の無口をつけて引き綱を持つと、馬栓棒を外して通路へ連れ出す。
ゆっくりとした動作で出てきたヴェスニャクに、サプフィールは思わず後ずさった。
「改めて見ると……馬ってやっぱり大きいんですね」
「そうですね。特に貴方の体格だと余計にそう見えるでしょう」
低い身長に、小柄な体。スヴェトザールはヴェスニャクの背を見下ろせる高さがあるのに対して、サプフィールの身長はヴェスニャクの体高よりも下だった。
「少し羨ましいです。より一層馬の迫力を感じられそうですから」
「そんな……。私だって、スヴェトザール様の身長が羨ましいです。高い位置にある物とか木の実とか……取りやすそうですし。手も大きいから撫でられる面積も増えますし」
自身の小さい手を見ながらサプフィールが返す。
「ではその分、ヴェスニャクが許す限りたっぷりと撫でてください。私とは触り方も違いますから、ヴェスニャクも新鮮に感じるかもしれません」
そう言って、スヴェトザールが肩から胴の辺りを撫でるように促す。
「後肢の真後ろや、すぐそばには立たないようにしてください。あと、今日は腹や脚の近くは触らないように」
「は、はい」
忠告を受けながら、サプフィールがまたそっとヴェスニャクに手を伸ばす。
掌全体で胴を撫でると、首よりも平らな毛並みの下で大きな身体がゆっくり呼吸している。息をするたび、手のひらが僅かに押し返された。
「首とはまた違った触り心地です……」
厚手の毛布のようなしっかりとした膨らみを感じながら指を埋める。サプフィールは片方の手を伸ばし、たてがみにも触れた。
「思ったより、サラサラしてないんですね」